「感謝を申し上げます」は正しい敬語?例文と言い換え

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「感謝を申し上げます」と書いたあとで、手が止まったことはありませんか。よく見かけるのは「感謝申し上げます」のほうで、「を」を入れた自分の書き方が間違っているように思えてきます。

先に結論をお伝えします。「感謝を申し上げます」は敬語として誤りではありません。ただし書き言葉の定型としては、「を」を省いた「感謝申し上げます」のほうが圧倒的に多く使われています。どちらを選んでも失礼にはなりません。

この記事では、両者の違いと使い分け、ビジネスメール・お礼状・スピーチでそのまま使える例文、言い換え表現、うっかりやりがちなNG例までをまとめました。迷ったときに開けば答えが出る形にしています。

目次

「感謝を申し上げます」は正しい敬語?結論から

正しい敬語です。目上の方にも取引先にも、そのまま使って問題ありません。ただし「使えるかどうか」と「よく使われているかどうか」は別の話なので、そこを分けて見ていきましょう。

敬語としては正しい。ただし「を」なしのほうが一般的

「申し上げる」は「言う」の謙譲語です。自分の動作をへりくだって表すことで、相手を立てる働きをします。つまり「感謝を申し上げます」は、「感謝の言葉を言います」をへりくだった形にしたものです。文法としてどこも壊れていません。

「二重敬語では」と心配される方もいますが、それも当たりません。二重敬語は一つの語に同じ種類の敬語を重ねたときに起きるもので、「感謝」という名詞と「申し上げる」という謙譲語の組み合わせは、これに当てはまらないからです。

それでも「見慣れない」と感じるのは、実際に流通している型が「感謝申し上げます」に寄っているためです。挨拶状の文例集やビジネス文書のテンプレートでは、ほぼ「を」なしの形で載っています。

なぜ「を」を省くほうが自然なのか

理由は、「感謝+申し上げる」がひとつながりの言い回しとして定着しているからです。同じ形の仲間を並べてみると、「を」が入っていないことがよくわかります。

  • お礼申し上げます
  • お詫び申し上げます
  • お慶び申し上げます
  • お願い申し上げます
  • ご報告申し上げます

どれも「を」を挟みません。挨拶状や式辞は、意味を伝えるだけでなく型どおりのリズムで読ませることが重んじられる場です。そこに助詞を一つ足すと、定型のテンポがわずかに緩み、説明的な響きになります。避けるべきというより、慣習として選ばれてこなかった、というのが実情に近いでしょう。

「を」を入れたほうが読みやすい場面

逆に、「を」があったほうがすっきりする場面もあります。次の3つに当てはまるなら、迷わず入れてください。

「を」を入れたい3つの場面
  • 感謝の前に長い修飾語が付くとき:「一年にわたるご厚情に対し、心よりの感謝を申し上げます」
  • 読み上げる原稿で、ひと呼吸置きたいとき:スピーチや朝礼など
  • 目的語を並べるとき:「感謝とお詫びを申し上げます」「深い感謝と敬意を申し上げます」

3つめは特にはっきりしていて、ここで「を」を落とすと文が崩れます。「感謝とお詫び申し上げます」では、二つの名詞がどこにかかるのか読み取りにくくなるためです。

短い定型の結びなら「感謝申し上げます」、前に説明が付く長い文なら「感謝を申し上げます」。この振り分けだけ覚えておけば、ほぼ間違えません。

「感謝申し上げます」との違いと使い分け

意味も敬意の度合いも、両者に差はありません。差が出るのは「読ませる文か、聞かせる文か」と「前後の語の長さ」の2点だけです。ここを押さえておけば、どちらを選んでも相手に違和感を与えません。

意味・敬意の度合いはほぼ同じ

「を」の有無で丁寧さが上下することはありません。取引先へのメールで「感謝を申し上げます」と書いても、格が下がったとは受け取られないので安心してください。

強いて言えば、「を」なしのほうが定型に忠実で、儀礼的な文書になじみます。「を」ありは、書き手の言葉として少し立ち上がって聞こえます。どちらが優れているという話ではなく、文書の性格に合うほうを選ぶ、という程度の差です。

話し言葉と書き言葉での向き不向き

書き言葉、とくに挨拶状・案内状・社外文書では「感謝申し上げます」が定番です。行数が限られた文書ほど、余分な助詞を削った形が好まれます。

いっぽう、声に出す原稿では「を」が効きます。朝礼のスピーチや式典の挨拶で「みなさまに、心より感謝を申し上げます」と読むと、「を」の位置で自然に間が生まれるからです。原稿を書くときは、実際に声に出して確かめてみてください。

「感謝いたします」「御礼申し上げます」との丁寧さ比較

感謝を伝える表現はいくつもあり、改まり方の段階が違います。相手と場面に合わせて選べるよう、一覧にまとめました。

表現改まり度向いている相手主な媒体
厚く御礼申し上げます最上級取引先・式典の参列者挨拶状・式辞
感謝申し上げます最上級目上・取引先挨拶状・社外メール
感謝を申し上げます最上級目上・取引先スピーチ・長めの文
感謝いたします高い取引先・他部署ビジネスメール
感謝しております中〜高上司・先輩メール・会話
ありがとうございます標準相手を選ばない会話・メール

「感謝いたします」は「感謝申し上げます」よりわずかに軽く、日々のメールで使いやすい表現です。社内のやりとりで毎回「申し上げます」を使うと、かえって距離を感じさせることがあります。

ノートパソコンの横に湯気の立つカップと便箋を置いた、朝の机まわりの水彩イラスト風イメージ

【ビジネスメール】そのまま使える例文

ここからは実際の文面です。コピーしてそのまま使えるよう、宛先や状況ごとに書き分けました。カギは「何に対する感謝か」を必ず一言添えることです。これがないと、定型句だけが浮いてしまいます。

取引先へのお礼(受注・納品・ご来社)

受注のお礼|例文

このたびは弊社製品をご採用いただき、誠にありがとうございます。数ある選択肢の中からお選びいただきましたこと、心より感謝を申し上げます。ご期待に沿えるよう、社内一同で準備を進めてまいります。

納品後のお礼|例文

先日は納品にあたり、細やかなご確認をいただきありがとうございました。短い納期にもかかわらず柔軟にご対応くださったこと、深く感謝申し上げます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

ご来社のお礼|例文

本日はご多用のところ弊社までお運びいただき、ありがとうございました。長時間にわたり熱心にご意見をお聞かせいただきましたこと、重ねて感謝申し上げます。いただいた課題は、来週中に整理してご連絡いたします。

アレンジのポイントは、最後の一文です。感謝で終わらせず「次に何をするか」を置くと、社交辞令に見えません。日付や工程を具体的に書けるなら、そのほうが誠実に伝わります。

上司・社内へのお礼

社内では、かしこまりすぎない長さが読みやすさにつながります。短めの一文を場面別に挙げます。

  • 資料の確認をいただき助かりました。お忙しい中お時間をいただき、感謝しております。
  • 企画の進め方について丁寧にご指導いただき、心より感謝申し上げます。
  • 急なお願いにもかかわらずご調整くださり、ありがとうございました。
  • 先日いただいた助言のおかげで、無事に着地させることができました。感謝いたします。
  • 休暇中にフォローしていただきありがとうございました。部署の皆さまにも感謝を申し上げます。

最後の例のように、感謝の相手が複数いるときは「〜にも感謝を申し上げます」と目的語を立てると収まります。ここは「を」が働く典型的な場面です。

退職・異動の挨拶メール

退職の挨拶|例文

このたび、九月末をもって退職することとなりました。在職中は数えきれないほどのお力添えをいただき、心より感謝を申し上げます。ここで学んだことを次の場所でも生かしてまいります。皆さまのますますのご活躍をお祈りしております。

異動の挨拶|例文

十月一日付で大阪支店へ異動することとなりました。三年間、至らぬ点を温かく支えていただきましたこと、深く感謝申し上げます。後任は同じ部署の田中が務めます。今後とも変わらぬご指導を賜れますと幸いです。

異動の挨拶では、感謝の直後に後任の名前を置くのが実務上のマナーです。読み手がいちばん知りたい情報だからです。

【手紙・挨拶状・スピーチ】での例文

紙の文書や読み上げる原稿では、メールよりも定型が重んじられます。結びに置く形が基本なので、書き出しから逆算して組み立てると迷いません。

お礼状の結びに使う

お礼状は「頭語→時候の挨拶→お礼の中身→結びの感謝→結語」という流れが基本です。感謝の言葉は終盤に置き、もう一度気持ちを固めて締めます。

  • 末筆ながら、皆さまのご健勝を心よりお祈り申し上げますとともに、重ねて感謝申し上げます。
  • 過分なお心遣いをいただきましたこと、家族一同、深く感謝を申し上げます。
  • 今後とも変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げ、御礼のご挨拶とさせていただきます。
  • まずは略儀ながら書中をもちまして、感謝の御挨拶を申し上げます。

手書きの場合、感謝の一文だけを行頭から始めると、視線が止まって印象に残ります。全体をぎっしり詰めず、結びの前で一行あけるのもおすすめです。

スピーチ・式辞・朝礼での使い方

読み上げる原稿では、聞き手が息継ぎの位置で意味を区切ります。そのため「を」を入れて間を作る書き方が向いています。

送別会の挨拶|例文

本日はこのような会を開いていただき、ありがとうございます。十年間、支えてくださった皆さま一人ひとりに、心からの感謝を申し上げます。この職場で過ごした時間は、私にとってかけがえのない財産です。

周年式典の挨拶|例文

本日は弊社の創立三十周年記念式典に、多数ご臨席を賜りました。日ごろのご支援に対しまして、社員一同を代表し、厚く感謝を申し上げます。これからも地域の皆さまとともに歩んでまいります。

アレンジのポイントは、感謝の対象をできるだけ絞ることです。「皆さま」だけで終えず、「支えてくださった」「ご臨席を賜った」と限定すると、その場の言葉になります。

年賀状・季節の挨拶状

年賀状や暑中見舞いは字数が限られるため、「感謝申し上げます」の短い形が使いやすくなります。前年の出来事を一つだけ添えると、印刷文面から抜け出せます。

  • 旧年中は格別のお引き立てを賜り、厚く感謝申し上げます。
  • 昨秋の展示会では大変お世話になりました。改めて感謝を申し上げます。
  • 暑さ厳しき折、日ごろのご厚情に心より感謝申し上げます。
便箋と万年筆、封筒を並べた机の上を斜め上から見た水彩イラスト風のイメージ

言い換え・類語表現

同じ文書の中で「感謝申し上げます」が続くと、読み手は単調に感じます。言い換えの引き出しを持っておくと、長い挨拶状でもリズムを保てます。

「厚く御礼申し上げます」「深く感謝申し上げます」

最も出番が多いのがこの二つです。「厚く」は気持ちの手厚さ、「深く」は気持ちの深さを表し、どちらも改まった文書で使えます。式辞や挨拶状では「厚く御礼申し上げます」が定番です。

  • 厚く御礼申し上げます|式典・挨拶状の結びに
  • 深く感謝申し上げます|個人的な恩義を伝えるときに
  • 心より感謝申し上げます|相手を選ばず使える万能形
  • 謹んで御礼申し上げます|かしこまった通知・案内に
  • 衷心より感謝申し上げます|式辞など格式の高い場に

「深謝」「拝謝」などの硬い表現

漢語を使うと、文面がぐっと引き締まります。ただし読み手を選ぶので、社内メールや親しい相手には向きません。

読み使い方の目安
深謝しんしゃ「深謝申し上げます」。深くわびる意味でも使われるため、前後の文脈をはっきりさせる
拝謝はいしゃ「拝謝申し上げます」。書き言葉専用のかたい表現
多謝たしゃ厚く感謝すること。手紙の末尾に単独で置く用法もある
感佩かんぱい深く心に刻んで感謝する意。式辞など限られた場面で

「深謝」は感謝と謝罪の両方の意味を持ちます。お詫びの文書に混ぜると意図が読み取りにくくなるため、感謝の意味で使うときは「ご厚情に深謝申し上げます」のように対象を明示してください。

少しやわらげたいときの言い方

相手との距離が近い場合、「申し上げます」は硬すぎることがあります。次のような形なら、丁寧さを保ちながら温度を上げられます。

  • 本当にありがとうございました
  • 感謝の気持ちでいっぱいです
  • いつも感謝しております
  • お力添えに助けられました
  • おかげさまで無事に終えられました

使うときの注意点とNG例

表現そのものは正しくても、置き方を誤ると読み手に引っかかります。実際にやりがちな3つを挙げます。

一通の中で何度も使わない

冒頭と結びの両方に「感謝申し上げます」を置くと、同じ言葉が短い間隔で並びます。読み手には、定型句を貼り付けただけの文面に見えかねません。

目安として、感謝を表す改まった表現は一通につき1〜2回までです。二度目は「重ねて御礼申し上げます」「改めて感謝いたします」と形を変えると、繰り返しの印象が消えます。

「感謝の意を申し上げます」は不自然

丁寧にしようとして語を足すと、かえって座りが悪くなることがあります。代表例が「感謝の意を申し上げます」です。「意(気持ち)を言う」という組み合わせになり、人によっては据わりの悪さを感じます。気になる場合は「感謝の意を表します」と言い換えると無難です。

  • △ 感謝の意を申し上げます → ○ 感謝の意を表します
  • △ 感謝の言葉を申し上げます → ○ 御礼のご挨拶を申し上げます
  • △ ご感謝申し上げます → ○ 感謝申し上げます

3つめの「ご感謝」は、自分の気持ちに尊敬の接頭語を付けた形になるため使いません。感謝するのは自分なので、「ご」は不要です。

お詫びと感謝を同じ文に混ぜない

「ご迷惑をおかけしましたが、ご対応いただき感謝を申し上げます」のように一文へ詰め込むと、謝罪と感謝のどちらが主なのかがぼやけます。文を分けるだけで読みやすさが変わります。

分けて書いた例

このたびは納期の変更でご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。にもかかわらず柔軟にご調整いただきましたこと、深く感謝を申し上げます。

謝罪を先に置き、感謝を後に置くのが基本の順です。逆にすると、感謝で謝罪を薄めたように受け取られることがあります。

よくある質問

「感謝を申し上げます」は目上の人に使っても失礼になりませんか?

失礼になりません。「申し上げる」は謙譲語なので、目上の方や取引先にこそ向く表現です。「を」の有無で敬意が変わることもありません。

「誠に感謝申し上げます」という書き方は正しいですか?

実務では広く使われていますが、文法的には見解が分かれます。「誠に」は本来、形容詞・形容動詞を修飾する副詞のため、名詞の「感謝」にかかる形と捉えると誤用という指摘があります。一方で動詞「申し上げます」を修飾していると捉える立場もあり、どちらか一方に断定はできません。気になる場合は「誠にありがとうございます」「心より感謝申し上げます」など、指摘の少ない形を選ぶと安全です。

「感謝申し上げます」と「御礼申し上げます」はどう違いますか?

「感謝」は自分の気持ちを、「御礼」は相手に返す行為を指します。気持ちを伝えたいときは「感謝」、儀礼として礼を尽くす文書では「御礼」がなじみます。式辞や挨拶状では「厚く御礼申し上げます」が定番です。

メールの件名に「感謝申し上げます」と入れてもよいですか?

件名では「【御礼】〇〇の件」のように短くまとめるのが一般的です。件名は用件を判別するための場所なので、感謝の表現は本文に置いたほうが読み手の負担が減ります。

口頭で「感謝を申し上げます」と言うのは大げさですか?

日常会話では硬く響きます。スピーチや式典の挨拶など、あらかじめ原稿を用意する場面向けと考えてください。ふだんのやりとりでは「ありがとうございます」「感謝しております」で十分です。

お悔やみの場面で「感謝申し上げます」は使えますか?

会葬御礼など、参列いただいた方へのお礼としては使えます。この場合は「ご厚志を賜り、厚く御礼申し上げます」の形が定型です。なお弔事では「重ね重ね」「たびたび」といった重ね言葉を避ける習わしがあるため、繰り返しの表現には注意してください。

まとめ

「感謝を申し上げます」は正しい敬語です。「感謝申し上げます」との間に、意味の差も敬意の差もありません。定型のリズムを優先する短い結びでは「を」なし、修飾語が長い文や読み上げる原稿では「を」あり、と振り分ければ迷わなくなります。

そのうえで効いてくるのは、感謝の対象を具体的に書くことです。「ご対応いただき」「ご臨席を賜り」と一言添えるだけで、定型句が自分の言葉に変わります。

迷ったら「心より感謝申し上げます」。相手も場面も選ばず、書き言葉でも読み上げでも収まる、いちばん外れの少ない形です。

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